浪速神楽の装束(巫女の衣服)

白衣に緋の襠高袴(馬乗袴です、行灯袴ではありません)、舞衣(ちはや と呼ぶ人もいますが、正確には まいぎぬ です)、その上に金襴の千早(陣羽織の様な形のものです、着用しない時も有ります)が装束の基本です。
頭髪は、引詰め髪にし、束ねた髪を紫の袋(当社では)に入れ、奉書で折った熨斗と、丈長(髪飾りの事ですが、色々な種類が有ります)をつけます。
舞衣も、普通の巫女さんが結婚式等で着用している物より大ぶりな、浪速神楽用の物を使用いたします。
又、舞衣の前の打合せは、袴の結んだ前紐の下に挟みこみます(上から舞衣を羽織っただけではありません)どうもわかり難いですね(汗)何れ写真を載せます。


次回は舞や管方の、1ポイントアドバイスの予定です。

剱ノ舞(中級者向けの解説です)

阪神の神社では、「式神楽」と並び、一番普及している神楽ですね。普通は一人舞か、二人舞が多いですが、佐備神社では、四人舞も指導しています。
一人舞だけでも、一番短い形(俗に Z ゼットと呼ばれています)、下二方の切り込み、四方切り込み等、色々な形式が御座います。夫々、切り込みの場所が違いますから、管方と打物は、舞を理解していないと(二人舞、四人舞も切り込む場所が違います)合わせる事が出来ないわけです。又、拝殿神楽殿の広さにより、歩数が変わると管方はそれに合わせて、奏楽しなければいけません。
巫女さんも奏楽のテンポを良く聞き、間を外さない様に歩いて下さい。
管方も、暗譜しないと舞を見ながら演奏出来ませんね。

次回は楽器や楽譜のお話の予定です。

笛の話

浪速神楽では、どの様な笛を使用するのですか?、と言う質問をよく受けます。
神楽だから「神楽笛」?あるいは「篠笛」?
正解は雅楽で使用する「龍笛」です。
「神楽笛」とは「浦安の舞」や「御神楽」(みかぐらと読みます、宮中神楽のことですね)等で使用される、
六つの指孔がある笛で、「龍笛」よりも、約1音程音律が低い笛のことです。「篠笛」等は使用しません。
では、どの程度笛が吹ければ、浪速神楽は奏楽出来るのでしょう?
冨永正千代師が作成された浪速神楽の譜面は、雅楽の譜面と似た形式で書かれています。
私が思うには、唐楽の六調子の内で「壱越調」の曲が吹ける程度の技量は、必要かと思います。篠笛や尺八、フルート等の経験者は、少し(テクニックの面で)は楽ですね。

 続く
たとえば、雅楽の楽譜では「 中 ちゅうと読みます」と書いてあれば「中」を吹くだけですが、浪速神楽ではその音以外に、色々な装飾音符が入ります。
皆さんが冨永流(富永流)の譜面をお持ちでも、そのまま譜面の音を吹かれたのでは、冨永流浪速神楽になりません。独特の指使いですから、耳コピーでは難しいですね。正確に習ったかどうかは、指使いを見ると判ります。(譜面には基本の音しか書いてありません)
もう一つは、曲の速度です。「早神楽」等は、相当速度が速いです(4分音符=120位)
これに、装飾音符が入る訳ですから、大抵の人は最初は手が動きません。
雅楽の曲とは、また違った難しさが有りますね。


かなり専門的な話になり、すみませんm(__)m
次回は、「式神楽」のお話です

「式神楽」
「式神楽」あるいは「庭ノ舞」「里神楽」「神遊」等色々な呼称があります。
関西の神社では、祭典神楽として用いられる事が多いです。
正式には、笏拍子、銅拍子(手拍子とも言われます)、太鼓、龍笛の4名で奏楽します。
原則として、伶人長が神楽歌を朗詠し、その後2拍手、笏拍子を合図に奏楽致します。
又、舞の終わりにも、2拍手を致します。(殆どの舞がこの形式ですが、神楽歌を朗詠しない事もあります)
曲によっては、舞の区切りの間に「中の歌」が入る物もあります。(剣の舞、相舞等)
奏楽には4名必要ですが、人数が足りなければ、龍笛と太鼓でも奏楽出来るのも、浪速神楽の良い所ですね。
1分以内に終わる舞(早神楽等)とか、10分以上かかる舞(菖蒲刈等)とか、舞の種類が多彩なのも、浪速神楽の特徴です。
式神楽は浪速神楽の基本の舞ですので、当社でも最初にお稽古いたします。

「神楽舞のアドバイス」
舞の基本動作としましては、足だけで考えましても、立つ、座る、歩く、回る等が有ります。
この中で、「歩く」はどの舞でも当たり前にある訳ですが、かなり難しい要素です。
浪速神楽は普通の歩き方ですが、浦安の舞、悠久の舞等はスリ足ですね。
どちらの歩き方にせよ、基本は左右の足へのスムーズな体重移動です。
腰から膝、足首への重心の移動がうまく出来、尚且つ、体の芯がぶれない様にしなければいけません。
舞楽、能、日本舞踊等どの舞も「歩く」は難しいと言われています。
又、「座る」は、浪速神楽の場合、独特の座り方が有ります。ご存知でしたか(^^)
浪速神楽の舞ぶりは、非常にシンプルなものが多いですが、それだけにこれらの基本動作
がきっちりと出来ているかどうかで、舞に大きな差が出てきます。
いずれの舞も、ご神前で奉納をするのが主眼ですので、巫女としての精神的な心構えも
重要な要素となります。
技術論よりも、最終的には此れに尽きます。

「箏の話」
雅楽や神前神楽で使用する箏は、楽箏や和琴、十三弦箏(生田流、山田流の普通の箏)が有ります。
祭祀舞の豊栄舞は、十三弦箏(又は楽箏)、朝日舞は和琴を使用します。
浦安の舞や悠久の舞は、他の団体でも十三弦箏で演奏することが多いようです。
楽箏では、両曲共に出てくる「押し手」が少し大変かもしれませんね。
現在の楽箏には「押し手」(左手で柱の左側を押し上げ、決まった音高まで上げる)
という奏法が有りませんので、雅楽の箏のみの経験者は、未知の奏法と為るわけです。
又、豊栄舞には左手で弾きながら(ピッチカート)右手の爪で同時に弾く奏法、
浦安の舞には、2本同時に弦を押す押し手(かけ押しと言います)等が出てきます。
両者とも、俗箏(生田流、山田流の箏)の経験者であれば、なんでもない当たり前の
奏法ですが(きっちりと出来る方は少ないですが‥)楽箏の方には難しいと思います。
又、押し手の後の音(押し上げた音の余韻)の処理もしなければ為りませんよ。
結構大変でしょう(^^)
両曲共、佐備神社では十三弦箏(又は楽箏)を生田流の爪で演奏しております。.
「調弦のコツ」
弦楽器はどれも調弦が大変ですね(^^; 現在は安価なピッチメーターが沢山出ていますが、
メーターに頼るより、やはり耳を鍛えた方が良いですね。
調弦で一番判りやすいのは、一と五の同音(完全1度の和音)ですね
まず、基本の音だけはメーターで合わせます。
次に「一五」と和音(完全1度の和音です、合わせ爪と言います)で合わせます。
この時に音の響きと、「うなり」をを良く聞いてみましょう。余韻を良く聞くと「うなり」
が有るかどうかが判ります、この「うなり」が判別出来る様に何度も聞いてみましょう。
細かな「うなり」であれば、かなり音がずれています。
大きな「うなり」になれば、大分正しい音に近づいています。
完全に合うと、「うなり」は無くなります。
合わせる方の弦を少し低めにしておき、両方の弦の余韻が残っているうちに下から
合わせる弦をツゥーンと「うなり」の無くなる所まで上げて行く方法が「うなり」が
良くわかりますよ(^^)
ピッチメーターも参考にしながら、目と耳の両方で何度も確認しましょう
同じように、「五十」の合わせ爪(完全8度の和音)
「五七」の合わせ爪(完全4度の和音)
「五八」の合わせ爪(完全5度の和音)
を練習して見て下さい(完全4度と5度は少し難しいですよ)
以上の四種類の和音が判るようになれば、楽箏での律旋、呂旋の調弦は出来ますね(^^)
書いてみると此れだけですが、実際はかなり難しいですよ

「天神祭」
7月24日―25日に催行される天神祭の奏楽は、当会がご奉仕させて頂いております。
3千人規模の陸渡御や、百艘に及ぶ船渡御はさすがに壮観ですね(^^)
残念ながら平成25年度より、神楽船の奉納は中止と為りました

「住吉大社 若宮八幡宮例祭」
1月12日の例祭では、「湯神楽」を奉納いたします
湯神楽は各地に色々な奉納の次第が有りますが、こちらは「冨永流浪速神楽」の湯神楽次第です
最後の神楽に本来は「式神楽」を奉納しますが、この祭典では「岩戸開き」を奉納いたします
湯神楽奉仕は白袴に素足草履が基本です。後の式神楽は普通の巫女装束です
この為本来は巫女が二人必要です(一人だと着替えるのに時間がかかりますね)
この祭典は戦前からの奉仕に為りますが、これは初代会長の決めた次第です



 巫女さん、必読(笑)です
 神前神楽をお稽古されている方の参考になるかも知れませんね、
 いろいろ書いてみます。
 文中、特に注釈が無いものは、「冨永流浪速神楽」の舞様式で書いております。

                                            蘭陵オー

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